いつものように部屋の中をゴムまりのごとく跳ね回っているとき、ふと思い立った。
「ミスタードーナツが食べてえ…」
ここから5キロメートルも離れたスーパーの中にあるミスタードーナツから甘い誘惑が飛んできたのだ。すぐに着替えてミスドに向かった。
都会ではミスタードーナツが減ってきているようだが、田舎では依然として人気だ。その理由として競合他社であるドーナツ店が少ないことが挙げられると思う。でも俺はね、声を大にして言いたい。「ミスタードーナツが美味いからじゃ!!」
20分でミスタードーナツに着弾。早速店内に入る。ほら見ろ。任意のウイルス禍であるというのに、ドーナツのケースの前には客が四人ほど並んでいる。俺も最後尾に急いで並ぶ。早くドーナツを選びたい。ドーナツたちが選ばれるのを体育座りで待っている。
俺の二つ前に並んでいたおばさんが期間限定のショコラサンバを選ぼうとしていた。しかし、ドーナツが入った箱同士が引っかかって取ることができない。おばさんは箱を動かして外そうとしていたがついには諦めてしまった。
そのあと、おばさんの次に並んでいたお兄さんが器用に箱を動かして、おばさんが諦めたショコラサンバを獲得した。その時だ。その様子を見たおばさんがケースの前に戻って外れたもう片方のショコラサンバを取ったのだ。
おばさん!それでええんか!?
自分の力で道を切り開くことを諦めて、他の誰かが開けた道を通るんか!?
甘いドーナツという報酬は自分の力で得るものではないだろうか?
ドーナツはあきらめるな!!!
俺は箱がついていなくて取りやすいダブルショコラを選びました。あと、俺は今無職なのでお金は親のものであります。自分の力で得たものではありません。
早く就職してえ。